高額療養費制度と医療費控除の違いは?医療費を軽減できる制度を知っておこう

手術や長期入院など、医療費が高額になったときの救済処置として「高額療養費制度」と「医療費控除」という2つの制度があります。

この2つは名前が似ていますが、この2つの制度はまったく別物なので、混同しないようにしましょう。

高額療養費制度と医療費控除の違い

高額療養費制度と医療費控除は制度がまったく異なります。

簡単に説明すると、医療費そのものを軽減するのが「高額療養費制度」1年間に掛かった医療費の総合計から税金面の恩恵を受けられるのが「医療費控除」となります。

高額療養費制度と医療費控除を、初心者にもわかりやすい言葉で解説していきたいと思います。

高額療養費制度とは?

病院に支払う医療費そのものを軽減できる制度が、この「高額療養費制度」です。

手術や長期入院などで医療費が高額になっても、1ヶ月の医療費には自己負担限度額というのものが設定されており、それ以上は還付される仕組みになっています。

例えば、8月1日~8月31日までに掛かった医療費の合計が100万円だったとしましょう。

一般的な収入の人であれば、1ヶ月の医療費自己負担限度額は「8万100円+(100万円-26万7000円)×1%」と決められていますので、この場合は87,340円となります。

しかし、病院の窓口では3割負担の金額を請求されますので、医療費100万円であれば、30万円を支払うことになります。

限度額は87,340円なのに、病院側へ支払う金額は30万円なので、30万円-87,340円=212,570円多く支払っていることになります。

この払い過ぎた医療費を払い戻す制度が「高額療養費制度」という制度だと思ってください。

医療費控除とは?

1月1日から12月31日までの1年間に医療費の総合計が10万円を超えた場合、確定申告することで所得税の還付や翌年住民税の優遇が受けられるようになります。

例を挙げて解説すると、1年間の総医療費が24万円掛かったとします。

この場合、24万円-10万円=14万円なので、この14万円分が税金面で優遇される金額になります。

ただし、14万円全額が還付されるわけではありません。所得税率など少し複雑な計算があるのですが、ひとつの目安としては、14万円の10%にあたる14,000円ほどが所得税から還付される金額だと思ってください。

この医療費控除では所得税の他にも翌年度分の住民税が優遇されます。

住民税の優遇額も同じく10%なので、年間で14,000円ほど住民税が安くなります。

所得税と住民税を合計すれば、28,000円も税金面で優遇されたことになりますので、確定申告など少し煩わしい思いをしてでも、申請する価値はあると思います。

高額療養費制度と医療費控除の注意点

高額療養費制度も医療費控除もぜひ利用したい制度なのですが、上記で解説した内容はあくまでも解りやすくするために単純な例を挙げました。

本来であれば、所得額によって医療費の自己負担限度額も違いますし、医療費控除も申請できる医療費用などが細かく細分化されています。

高額療養費制度の注意点

高額療養費制度の自己負担限度額は、患者さん本人の年齢や所得によって細かく分けられています。

年齢では70歳未満と70歳以上75歳未満(75歳以上は後期高齢者医療制度の対象)、
所得では70歳未満で

  • 月収81万円以上
  • 51万5千円以上81万円未満
  • 27万円以上51万5千円未満
  • 27万円未満
  • 非課税者

に区分されています。

例えば70歳未満の月収83万円の人であれば、1ヶ月の自己負担限度額は252,600円+(総医療費-842,000円)×1%という計算式になり、同じく70歳未満の月収30万円の人であれば80,100円+(総医療費-267,000円)×1%という計算式になります。

1ヶ月間の医療費合計が100万円だったとしたら、月収83万円の人254,180円、月収30万円の人87,430円が実質的な1ヶ月間の自己負担限度額です。病院では3割の30万円を支払うことになりますので、月収83万円の人は45,820円が還付され、月収30万円の人は212,570円が還付されます。

また、75歳以上の場合は後期高齢者という区分に該当することになり、おおまかな内容は70歳以上~75歳未満とさほど変わりありません。

ちなみにこの高額所得者や一般所得者という区分についてですが、平成27年1月より変更されることになりました。

かつては、「高額所得者」「一般所得者」「低所得者」という3区分だったのが、さらに細分化されて5分化されています。

詳しくは以下のHPを参照してください。

全国健康保険協会HP www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150

最後になりますが、高額療養費制度で重要なことを一つアドバイスしておきます。

この高額療養費というのは、実際に払いすぎた医療費を、申請することで取り戻す制度だと思っている人も多いのですが、実は事前申請することで、病院の窓口で自己負担額を大幅に軽減することが出来るようになっています。

つまり、上記の例であれば払い過ぎた医療費を申請することで、その差額分を後日還付されるのですが、自分が掛かっている健康保険(社会保険や国民保険)の窓口に申請し、限度額認定証を発行してもらい、その認定証を病院の窓口に提出しておけば、自己負担限度額以上を請求されないことになっているのです。

この認定証を利用することで一時的に病院に支払っていた医療費を支払わずに済みますので、医療費の支払いで頭を悩ませている人はぜひ利用してほしい制度だと思っています。

医療費控除の注意点

こちらの医療費控除も制度自体は単純なのですが、内容はかなり複雑になっています。ですので、大事な部分だけを簡潔に紹介していきたいと思います。

医療費控除の対象は年間総医療費が10万円を超えた部分だという説明をしましたが、この総医療費に該当するのは、上記で説明した高額医療費で払い戻された医療費や医療保険などで支払われた金額などを差し引かなければなりません。

その分、病院に通うための交通費だったり、薬局で購入した薬代なども医療費として計上できることになっています。

さらに知っておいて欲しいのが、個人の医療費だけでなく、生計を一緒にしている家族分の医療費も一つにまとめて代表者が申請できるようになっていることです。

ちょっと複雑ですが、例をあげて解説していきますね。

  • 世帯主の年間医療費=21万円
  • 妻(配偶者)の年間医療費=1万円
  • 長男の年間医療費=6万円
  • 近所に住む祖母の年間医療費=5万円

(※同居していなくても、子が親の医療費を負担した場合などは合算することが認められます)

医療費の年間総合計=21万+1万+6万+5万=33万円となります。

この33万円が医療費控除の対象となるわけですが、実際にはこの金額から生命保険や医療保険などで支払われた金額を差し引かなければなりません。

上記の場合、世帯主が医療保険から入院保障として10万円を受け取っていたり、祖母が高額医療費として2万円が還付されているとしましょう。そうすると33万円から10万円と2万円を差し引くので、医療費控除で申請できるのは、21万円ということになります。

このように、各家庭で入っている保険や高額療養費制度などによって、どこまでの医療関連費が認められて、どこまでが差し引かれるのかが変化します。

医療費控除の申請を考えているのであれば、各保険の適用範囲などを調べて利用しましょう。

~記事のまとめ~

今は病気の家族がいないとしても、親の高齢化や突発的な病気など、いつかきっと病気と向き合う日が来ます。
そんな時のためにも、どのような医療費の優遇制度があるのかを知っておくだけでも、負担額は大きく違ってきます。

高額療養費制度と医療費控除は、病気がちな人がいる家庭では絶対に避けては通れない項目です。
この2つの制度を知っているだけでも医療費を大幅に軽減することができますので、ぜひこの機会に少し勉強をしてみてはいかがでしょうか?

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