介護認定が高い方が老人ホームでは有利なの?
一般的に老人ホームと呼ばれる施設には、大きく2つに分類することができます。
それは要介護認定を受けている人だけが入所できる施設と、要介護認定に関係なく入所できる施設です。
ここでは、要介護認定を受けている人だけが入所できる「介護老人保健施設」「特別養護老人ホーム」などに想定して話をしていきたいと思います。
介護認定とは?
平成12年から介護保険制度がスタートしました。
この介護保険制度を利用するためには、「要介護・要支援認定」に申請し、要介護者であるという認定を受ける必要があります。
介護認定レベルは、介護の必要性に応じて7段階に分けられています。

この表の右端にある「支給限度額」というのが、介護保険を利用できる限度額となります。つまり、当然ですが介護のレベルが高くなるほど、利用できる介護保険額も多くなるということです。
支給限度額とは?
要介護者が介護サービスを受ける場合、当然ですが介護サービス費用が発生します。
介護サービスとは、在宅介護サービス(入浴、食事の介助や通所リハビリなど)だったり、施設介護サービス(老人ホーム費用など)のことを指しています。
この介護サービスの費用を補うのが介護保険ということになり、介護サービスの費用から9割が介護保険、残りの1割は利用者負担となります。要は国民健康保険や社会保険などの病院費用と同じだと思ってください。
しかし、国民健康保険や社会保険と違うところは、介護保険で1ヶ月に利用できる金額に限度額が設けてあることです。それがこの「支給限度額」ということになります。
すごく単純に説明するなら、要介護1の認定者を老人ホームに入所させているとします。
その老人ホームの利用料が月に10万円掛かる場合、そのうち介護保険から16,580円が負担されるので、入居者の自己負担費用は「10万円―16,580円=83,420円」となります。
介護認定が高いほど、老人ホームの入所費用は安くなる?
ここまで読んでいただいた人の多くが、それだったら介護保険の支給限度額が高い要介護5の人が老人ホームの入居費用が安くなると思うはずです。
しかしそれが大きな勘違いなのです。要介護のレベルが高くなれば、それだけ老人ホームで働く職員の手間が掛かることになります。
つまり、同じ老人ホームでも、症状が比較的に軽い要介護1の人と、介護レベルが高い要介護5の人では、1ヶ月の老人ホーム利用費用が根本的に異なります。
施設により利用料金は違いますので一概には言えませんが、要介護1の人だと1ヶ月の老人ホーム費用は10万円なのに対し、要介護5の人では1ヶ月の費用が15万というように高額になるのは当然のことです。
- 要介護1=施設費用10万円―支給限度額16,580円=利用者の負担額は「83,420円」
- 要介護5=施設費用15万円―支給限度額35,830円=利用者の負担額は「114,170円」
このケースだと要介護5の入居者のほうが、1ヶ月で3万円ほど負担額が増えることになります。
これはすでに介護サービスを利用している人だったり、その家族にしてみれば誰でも知っているような常識的な知識に過ぎません。
では、なぜ今回わざわざこの記事を書いたのか?
それは、これから要介護認定を受けようする人の多くが、少しでも介護レベルが高く認定されたほうが、何かと有利だと勘違いしている人ばかりだからです。
近年では、老人ホームへの入居を希望する人が増加しており、施設数に対して入居希望者が圧倒しています。そのため、特別養護老人ホームなどへ入居するためには、1年や2年待つケースも珍しくありません。
そんな現状を打破するために、国が打ち出した方針が「介護認定レベルが高い人を優先的に入居させる」ことです。
たしかに介護認定4や5となれば、家族単位の介助では手に負えないのも現状なので、この方針が間違っているとはいいませんが、そのため介護レベルを高く認定されるほど得をすると考える人はこの先、益々増加すると思われます。
介護認定が降りてから、老人ホームの費用などが割高になることを知っても時すでに遅しです。
最低限の知識を身につけてから、介護認定の申請をすることを強くお薦めします。